群論と量子化学のスケッチ   [2018.12.15]

群論といえば若きサラリーマン時代,人気(ひとけ)もまばらな早朝の通勤電車の片隅で,朝日を浴びながら分厚いハイネの「量子力学と群論」を読んでいたのを思いだします。この本の第3章あたりまでメモ書きが残っているので,そこまでは読んだのでしょうね,中身はすっかり忘れましたが,懐かしい思い出です。

ある日,ふと本棚に目をやるとハイネの本が目に飛び込んできて,昔のことを思いだしました。いつか,その気になったときにでも,量子化学で使われる群論をできるだけわかりやすくまとめてみよう。。。という思いは以前からあったのですが,ハイネの本の思い出をきっかけにその気になり,いろいろ参考書を読み,勉強しながらまとまったのが本稿という次第です。第6話の「群論の分子軌道法への応用」を書き終えたあたりで残念ながら意欲も根気も急速に衰えだし,もう少し話題を拡げるつもりでしたがとりあえずそこで筆を擱くことにしました。

「群論と量子化学のスケッチ」というタイトルから察せられるように,群論の重要な定理の証明などは大抵スルーし,群論を量子化学へ適用していくための方策のようなものを主体にまとめています。ただし,著者の浅学ゆえのおかしな議論や誤りなどが散在しているかもしれません。そのような点をご指摘いただければありがたいです(←期待せずに待っています)。兎も角,そのようなことに注意を払いながら,気楽に読んでいただければと思います。全6話の構成です。


第1話 群とは何か
1.1 群の定義
1.2 元にもいろいろ個性がある
1.3 剰余類というグループ
1.4 群と群から群を作る直積

第2話 点群

2.1 点群とは不動点をもつ対称操作からなる群
2.2 点群には名前が付いている
2.3 点群の対称要素と主な分子

第3話 群の表現(1)

3.1 群の表現とは対称操作を具象化したもの
3.2 対称操作を行列で表す
3.3 点群を表現行列で表す
3.4 群の表現と基底

第4話 群の表現(2)
4.1 指標とは
4.2 射影演算子で基底関数を求める
4.3 マリケン(Mulliken)記号について

第5話 群論と量子化学
5.1 系の縮退と固有関数
5.2 基底関数の直交性
5.3 直積表現の指標
5.4 2つの基底関数の積の積分

第6話 群論の分子軌道法への応用
6.1 分子軌道法の概要
6.2 水分子
6.3 アンモニア分子
6.4 π電子系


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 ・運動量演算子の表記と極座標表示。

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Diracの「量子力学」の教科書を読もうという試みです。今のところ途中で停泊しています。


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