熱・統計力学        戻る


吸着現象   (2023.06.17/梅雨の晴れ間)

学生時代,先生から
  「来週は吸着の実験をやりますので各自下調べをしておくように」
  「は~い」
といった調子で,指定された教科書を読み,ラングミュアーの吸着等温式が簡単に導出できたので
少し舞い上がり,実験に臨んだものです。得られた実験データを整理するとなんとも意味不明!?
なものに。。。他の連中はそれなりに結果をだしている。ガ~ン!!とショックを受けましたが,
若さゆえにすぐに回復。“まぁ実験の手順がまずかったんだろう”ということにして自らを納得
させたものでした。 吸着といえばラングミュアーの吸着等温式と若き日のこの甘辛い思い出が
脳裏に浮かびます。

 さて,本レポートは気体の吸着現象を対話形式でまとめました。対話形式だと痒いところに手が
届くようで,書いているコチラもあまりストレスを感じない。K氏とキャサリンご両人のやり取りを聞
きながら読み進めるのも楽しいと思います。

目次は以下のとおり。

<目次>  pdf
§1.Short History
§2.吸着現象とは
§3.吸着力について
§4.吸着等温線
   ・Henry型 ・Langmuir型 ・Freundlich型
   ・B.E.T型 ・階段状型   ・ヒステリシス型
§5.吸着の理論 
  (1)Langmuirの吸着理論
  (2)B.E.Tの吸着理論
§6.比表面積を求める
§7.各種吸着速度式
§8.細孔内拡散



乱流強制対流熱伝達  (2023.03.28/桜満開期)

 梅が過ぎたと思ったらいよいよ桜の満開期,本格的な春到来といったところでしょうか。

さて,伝熱シリーズのフィナーレ(?)を飾る「乱流強制対流熱伝達」のレポートをアップします。

乱流理論は首尾一貫した理論体系というより,一筋縄ではいかない複雑な現象の性質上,実験
データーを巧みにとりいれた半経験的な性格を有していて,そこにまた面白みがあるのかも知れ
ません。もっとも現場では非線形偏微分方程式を力づくで解くべく,最新鋭コンピューターを駆使し
た数値解析の研究に汗を流しておられることと思います。

本レポートは高度に専門的な内容には首を突っ込まず,半経験的な乱流理論の一端を伺うべく
まとめてみたものです。興味のある方は一読していただければ,そしておかしな所があればご指摘
いただくと有り難い。

<目次>   pdf
§1.プランドルの境界層方程式
§2.乱流における境界層方程式
§3.乱流境界層の厚さ
§4.乱流境界層の一般速度分布
§5.摩擦係数から熱伝達率を類推
 5-1.コルバーンのアナロジー
 5-2.レイノルズのアナロジー
 5-3.プランドル・テイラーのアナロジー
 5-4.カルマンのアナロジー



自然対流熱伝達  (2023.02.04/立春)

まだまだ寒さ厳しい時節ですが,暦の上では春を迎えました。

「熱の移動現象(伝熱)」,「強制対流熱伝達」に引き続いて「自然対流熱伝達」のレポートを
アップします。

静止している流体内に流体より温度の高い物体を置くと,物体表面近くの流体は熱膨張によっ
て密度が小さくなり浮力が生じます。この浮力が流体に働く重力より大きくなると,物体表面近く
の流体は上向きに上昇し,その空いたところに重い部分の流体が沈降してきます。このような
上昇と沈降が連続して起こることにより流体の移動が生じます。この流動は自然に生じるので
これを自然対流と呼んでいます。本レポートは自然対流による熱伝達に関するもので,強制対流
熱伝達のレポートも併せて読んでいただくといいかもしれませんが,その辺はご自由にどうそ。。

<目次>   pdf
§1.垂直平板からの層流自然対流熱伝達
 1-1.自然対流熱伝達の基礎方程式
 1-2.積分法(プロフィル法)による近似計算
 1-3.熱伝達率とヌセルト数
§2.水平平板からの層流自然対流熱伝達
§3.密閉空間内の自然対流熱伝達
 3-1.縦に長い密閉空間
 3-2.水平方向に長い密閉空間


強制対流熱伝達  (2022.01.20/大寒)

「熱の移動現象」の姉妹編として対流熱伝達の基礎的な事柄をまとめました。
対流熱伝達の中でも話題は強制対流熱伝達に限定しています。

<目次>   pdf
§1.熱伝達率
  1-1.局所熱伝達率と平均熱伝達率
  1-2.ヌセルト数
§2.対流熱伝達の基礎方程式
  2-1.境界層流れ
  2-2.熱伝達の基礎方程式
§3.水平に置かれた平板状の強制対流熱伝達
  3-1.平板層流境界層の速度場
  3-2.壁面局所摩擦力(せん断力)
  3-3.平板境界層内の温度分布と熱伝達率
   ●別解:積分法(プロファイル法)による近似解 (2023.2.11追記)
§4.水平円管内の層流熱伝達 (2023.2.25追記)
  4-1.円管内の流れの様子
  4-2.円管内の層流熱伝達


熱の移動現象(伝熱)  (2022.12.15) 

関係ないですが本日74回目の誕生日を迎えました(めでたくもあり,めでたくもなし)。

さて,冬場になると暖が恋しくなりますね。だからというわけでもないですが,熱の移動現象の
基礎的な事柄をまとめましたのでアップしておきます(今年の仕事納め)。多く載せた例題は
参考書籍から拝借しました。感謝します。
          pdf
<目次>
§1.熱の3つの移動形態
§2.熱伝導
  2-1.フーリエの法則
  2-2.熱の収支と熱伝導方程式 
  2-3.1次元定常熱伝導
  2-4..内部発熱のある1次元定常熱伝導
§3.熱伝達
  3-1..ニュートンの冷却法則
  3-2.熱通過率
  3-3.フィンの放熱とフィン効率
§4.放射(輻射)熱伝達
  4-1.黒体放射とプランクの法則
  4-2.灰色体からの熱放射
  4-3.物体間からの放射伝熱量
  4-4.形態係数
§5.非定常熱伝導
  5-1.1次元非定常熱伝導
  5-2.集中熱容量モデル


統計力学ノート  (2022.11.03)

古典統計力学のノートです。   pdf

<目次>
§1.統計力学の概要
 1-1.統計力学とは
 1-2.統計集団
 1-3.基本仮定
§2.力学的状態と位相空間
 2-1.μ空間とΓ空間
 2-2.時間平均と統計平均
 2-3.Liouvilleの定理
§3.小正準集団(ミクロカノニカル・アンサンブル)
 3-1.微視的状態の数
 3-2.平衡分布
 3-3.小正準集団の分配関数と熱力学的諸量の関係
 3-4.Boltzmannの関係式
 3-5.2準位系
 3-6.熱的に接触する2つの系
§4.正準集団(カノニカル・アンサンブル)
 4-1.正準集団の分配関数
 4-2.エネルギー等分配の法則
 4-3.不完全気体
 4-4.エネルギーの揺らぎ:小正準集団と正準集団の関係
§5.大正準集団(グランドカノニカル・アンサンブル)
 5-1.大正準集団の分配関数
 5-2.粒子数の揺らぎ


真空技術 (2022.07.09) pdf

真空といっても量子論で扱う真空の話ではなく,真空パック等でお馴染みの真空に関する話です。
真空技術は気体分子運動論の知識がベースとなっていますので,その知識なしでは話の筋を追う
ことが大変難しくなります。
本レポートは気体分子運動論の応用という観点から真空技術を眺めたものです。真空ポンプの
技術的な話題は完全にスルーしています。
内容は以下のとおりです。

<目次>
§1.気体分子運動論からの帰結
 1-1.マクスウェルの速度分布関数
 1-2.平均速度,平均自乗速度,根平均自乗速度,最大確率速度
 1-3.自由行程
 1-4.4.入射頻度
 1-5.圧力
 1-6.気体の粘性
 1-7.気体の拡散
§2.真空技術
 2-1.排気の方程式
 2-2.真空容器内での分子の挙動
 2-3.実効排気速度(リークと吸着分子離脱の影響)
 2-4.コンダクタンス
 2-5.粘性流,分子流とクヌーセン数
 2-6.粘性流のコンダクタンス
 2-7.分子流のコンダクタンス


結晶成長 (2022.05.16)  pdf

学生の頃,気の合う仲間4人が集まり,なにが契機となったのか忘れましたが,
    『結晶成長の自主ゼミをやろか』
ということになり,初回はご専門の先生を招いてご訓示をいただこうということで各自それなりの準備をして
ゼミ初日を迎えました。
片手に分厚い本を掲げて室内に入ってこられた先生は,ドンとテーブルに本を置かれて曰く
『Crystal Growthをやろうと思ったらFowlerの「Statistical Mechanics」を読んどくとええで。私も学生時代
に手垢で汚るぐらい読んだわ。名著と言われているね。』
そのお言葉と分厚い原書を見て瞬時に目が点になると同時に鼓膜がピーンと張ってそれ以上先生のお話が
耳に入らず。。。みんなもポカ~ンとした顔に。
果たせるかな2回目はボルツマン分布がどうだとか,分配関数がどうだとか,最初の目的からドンドン逸れ
はじめ,統計力学の自主ゼミをやっているような雰囲気になり,当初の意気込みもどこへやら,次第に全員の
気も褪(あせ)せてきて3回目が終わったあたりで自主ゼミは自然消滅したのも懐かしい思い出です。
 本レポートは,黒田登志雄(著)「結晶は生きている」を種本に熱力学と統計力学の基礎的な知識の範囲で
結晶成長の基本的なお話をまとめました。この分野に興味のあるかたはご一読ください。おかしな点を見つけ
られたらご一報いたくとありがたい。気が乗ればこの続編にTRYするかも知れません。
内容は以下の通り。

<目次>
§1.結晶の育成法
§2.結晶はなぜ成長するか
 2-1.結晶成長と熱力学
 2-2.結晶成長の駆動力は化学ポテンシャル
 2-3.核の生成
§3.核生成のDynamics
 3-1.液滴の生成(3次元核生成)
 2-2.臨界核半径
 3-3.ヘルツ・クヌーセンの式
§4.成長のDyanmics
 4-1.2次元の核成長(沿面成長)


統計力学への散歩

統計力学というは学問は,よく知りませんが仔細に議論するとその根拠があまり明確でない点がある
といわれています。ここではそういう高級なお話は知らん顔して通り過ごし,気の向くままにあちらこち
らへと首を突っ込みつつ統計力学への散歩を楽しんでいきたいと思います。尤も,途中で疲れてしまっ
てCome back to My Home!となってしまうかも知れませんが。。。


 第1話:統計力学のあらすじ (2013.8.28)
  1.1 位相空間と微視的状態
  1.2 統計集合(アンサンブル)
  1.3 等重率仮定の導入
  1.4 微視的状態と熱力学的諸量の関係
  1.5 正準集合と大正準集合について


気体分子運動論
(2013.3.11) 一括pd

あれは大学2回生の最初のころだったと記憶するが,大きな教室で後ろの方ににチョコンとすわって
物理化学の講義を聴いた。講師は結晶成長をご専門とされる先生で,冒頭,『私はマイクの声が厭な
のでマイクを使わずにお話します。できるだけ大きな声でしゃべりますけど,聞こえない方がおられた
らその場で手を上げてください。』といわれて講義がスタートした。毎回大勢の学生が集まり,熱力学
の初歩やGibbs,Helmholtzのフリーエナ~ジー(←そのように発音された)など,はじめて耳にするような
お話が満載で,また,噛んで砕いて分かりやすく説明されるので,血のめぐりの悪い小生も分かった
つもりにさせられ,毎回の講義が楽しみだった。何回目かの講義から話は気体分子運動論に入り,
容器の圧力は気体分子が壁にぶつかるときに及ぼす力がその正体で,ボイルの法則はこのようにし
て導かれますと黒板に分子が壁にぶつかり跳ね返される図とその横に式を書いて丁寧に説明されてい
た。『分子間で衝突を起こしたり,また,あらぬ方向に飛び去ったりと,いろんな分子がおるわけで
すが,十分長い時間の平均をとればこれらの行動も帳消しされてしまうので,あまり細かいことは考え
ないでよろしい。』 ふ~ん,なるほど,そういうことかと合点(がってん)したまではよかった。講義も終了
し試験となった。数問あり,その中の一つに気体分子運動論でボイルの法則を説明せよという問題が
あった。四角い箱を書いて練習していたので〆た!と思ったが,容器は箱ではなく体積Vの『球』となっ
ている!! チョッとチョッと待ってぇ~といってももう遅い,立方体だったらすぐに答えが書けるが,相手
が「球」では,,,これは相手が悪すぎる,どないしたらエエニャ~!?と目を白黒。とりあえずなんとか
単位は取れたが,件の問題はあまりに悔しいので問題を勝手に立方体に変えて答えを書いたように記憶
する。あまりさえないエピローグはこのくらいにして,早速気体分子運動論の散策に参りましょう。なお,
第1話では容器が球の場合の答えがさりげなくサラッと書いてありますが,この裏には若き頃のあの苦渋
があったわけです。
(※)一旦レポートを書き上げたらあまり読み返さないという癖が染み付いているので,もしなにかおかしなところを等を発見されたら
お気軽にご一報ください。ヨロシク!


第1話 理想気体の圧力

容器に閉じ込められた気体の圧力計算など

第2話 気体分子の速度分布

速度分布則を使った圧力,平均速度の計算など

第3話 速度分布関数を求める

3つの方法で速度分布関数を求めています.

第4話 分子の衝突と平均自由行程

散乱断面積や衝突数の計算,平均自由工程など

第5話 ボルツマン方程式

ボルツマン方程式,緩和時間近似,H定理など。



    Ludwig
Eduard Boltzmann
1844.2.20-1906.9.5